50/50の理想的な共作関係

カレンO&デンジャー・マウス『ラックス・プリマ』
発売中
ALBUM
カレンO&デンジャー・マウス ラックス・プリマ

片や、ヤー・ヤー・ヤーズの天下無双のリード・ボーカルであるカレンO。片や、U2からアデルからレッチリまで、敏腕プロデューサーとして年中引っ張りダコのデンジャー・マウス。本作は、カレンOの新作をそんなデンジャー・マウスがプロデュースした……のではなくて、それぞれ強烈に個性的なふたりのアーティストが、刺激的なアイデアを「対等」に注ぎ込み合って完成した、真の意味での「コラボ・アルバム」だ。

カレン自身が「まるで冒険旅行をしてるみたいだった」と振り返る本作のサウンドは、確かに、ひとつのジャンルやスタイルには収まりきらない。その象徴と言えるオープニング曲“Lux Prima”は、ピンク・フロイド的な浮遊感に満ちたシンフォニック・サウンドで幕を開け、途中から60sラウンジ・ポップの甘美な世界に乗っ取られ、最後は90sトリップホップ的にダークな海に溺れていくという、とんでもない曲。しかも、いきなり9分超えなのだ。

2015年に出産し、人生で初めて「母」となったカレンの感情的な現在地から誕生したと思われる曲も多い。たとえば4曲目の“Woman”。60sソウル・ポップ風のパワフルなビートに乗って、ひとりの女性としての責任や自信が高らかに祝福されていく。

その一方では、R&Bディスコ的なキラキラ感でミラーボールも回り出す“Turn The Light”とか、マカロニ・ウエスタン風の「一騎討ち感」がハンパない“Redeemer”みたいな曲もあって、お互いがどこで相手の「限界超えボタン」を押したのか、実際のコラボ現場の会話を想像しながら聴くと、よりディープに楽しめるアルバムだと思う。一度きりのコラボで終わっちゃうのはあまりにも惜しいので、いつかまた、パート2もぜひ。 (内瀬戸久司)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』5月号に掲載中です。
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カレンO&デンジャー・マウス ラックス・プリマ - 『rockin'on』2019年5月号『rockin'on』2019年5月号
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