フィンランドのメタル・シーン屈指のギター・ヒーローであるアレキシ・ライホ率いるチルドレン・オブ・ボドム、通算10作目となるニュー・アルバム。もう冒頭3曲からグッと掴まれ、そのまま持っていかれる感覚がある好作品で、ファンの間でもかなり評判は高いようだ。
過去にメタル系フェスで何度かライブを観てきているが、キレキレのプレイを決めまくる強面のアレキシと、対照的に陽性で親しみ易いキャラのキーボード奏者=ヤンネ・ウィルマンの対比が、このバンドの個性を特徴付けており、過去の作品と比べて、ここが決定的に違うという部分は無いものの、エクストリームな激しさや切れ味を少しも鈍らせることなく、不思議なポップ・センスを発揮する独自のバランス感は、過去最高レベルで機能してるのではないだろうか。テクニカルでプログレッシブな部分と奇妙なポップ・センスが非常にいい具合に両立する形で体現されていて、ブラックンロールとはまた異なる手法で、伝統的なスタイルをビビッドに鳴らすことに成功したと言ってもいいと思う。
こうなった要因として、本作が初参加となる新ギタリストのダニエル・フレイベルグがどれだけ貢献しているかは不明だが(あんまり関係ないような気もする……)、結成から23年目、前身バンドのキャリアを入れると27年目のベテランが、これだけフレッシュな感覚を保てているという事実は、単純に素晴らしいことだ。個人的には、彼らが定期的に取り上げるカバー・ナンバーが、メタル枠に偏らず、ラモーンズ、リック・スプリングフィールド、はてはブリトニー・スピアーズなど興味深いセレクションになっていることに注目してきたが、そういった資質も本作では密かに活かされているという気もする。 (鈴木喜之)
詳細はワードレコーズの公式サイトよりご確認ください。
ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』5月号に掲載中です。
ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。