昨年末から始まった旧作品の最新リマスター音源によるリイシュー・シリーズの、第2弾リリース分4枚のうちのひとつ。英国ヘヴィ・メタルを牽引する新世代の旗手として登場したこのバンドが、母国やここ日本で成功を手に入れるのみならずアメリカでもアリーナ・アクトとしての地位を獲得し、作品面でも格段のスケール・アップがみられた時代を象徴する1枚であり、全米チャートでもそれまでで最高となる11位を記録。発表年の1986年というのは、ハリウッドの匂いのするグラマラスなメタル・バンドたちがMTVで人気を博し始めた頃。メタリカでいえば第3作の『メタル・マスター』(全米29位)当時、ガンズ・アンド・ローゼズの場合はデビュー前年にあたる。
本作について特筆すべきは、楽曲面における充実と、同じ意味でのエイドリアン・スミス(G)の貢献度の高さだろう。その存在自体がこのバンドのアイデンティティというべきスティーヴ・ハリス(B)も表題曲をはじめ良曲を提供しているが、彼のものとは一線を画するメロディや構成上のセンスを感じさせるスミスの楽曲は、バンドの看板となった二代目フロントマン、ブルース・ディッキンソンの特性をさらに際立たせ、ハリスの楽曲群と拮抗しながらコントラストを描き、アルバム自体をダイナミクスとスケール感の伴うものにしている。誤解を恐れずに言えば、数ある彼らの作品のなかでも洗練の度合いが高く、ある意味、聴きやすい。
バンドを象徴するシンボル・キャラクターであるエディは、本作のアートワークでは映画『ブレードランナー』的な近未来世界に迷い込んでいる。それと印象の重なる、いわゆるギター・シンセの導入も80年代半ばならではの時代性を物語っており、興味深い。 (増田勇一)
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