16年に始まったガンズ・アンド・ローゼズの再結成ツアーでは(約20年ぶりに!)ベーシストのポジションに復帰。イジーこそいなかったものの、ステージ上で「アクセル/スラッシュ/ダフ」の直列ラインを見た瞬間、感極まって涙が溢れ出した!というファンの方も多かったんじゃないだろうか。
本作は、そんなダフにとって通算3枚目となるソロ・アルバム。過去のソロ作では自らの音楽/精神的なルーツである「パンク」を前面に打ち出してくることが多かったのだけど、本作のサウンドはまったく違う――全曲のプロデュースを担当しているのは、なんとアウトロー・カントリー界の第一人者として知られるシューター・ジェニングス。バックの演奏も、普段はシューターと活動を共にしているバンドがそのまんまフル参加していて、カントリー/フォーク/ソウル/ゴスペルを主体とした音楽世界がアルバム全編でじっくり繰り広げられていく。
歌詞の方も、ガンズのツアーで地球上のあちこちを回るうちに感じたという「分断された世界」の悲しみや混乱がテーマになっていて、ダークな社会問題と向き合った曲が多い。たとえば“フォーリング・ダウン”ではドラッグ中毒、“ラスト・セプテンバー”ではレイプ、“コールド・アウトサイド”ではホームレス、“パークランド”では銃乱射事件がそれぞれテーマに。2010年代の後半に相次いで亡くなった旧友、クリス・コーネル&スコット・ウェイランドへ捧げた“フィール”も美しい鎮魂歌だ。激動のロックンロール・ライフの生存者として、ひとりの55歳のアメリカ人として、そしてまた、2人の娘の父親として、今「歌うべきこと」を本気で歌った、真っ直ぐで、どこまでもダフ・マッケイガンらしいアルバム。 (内瀬戸久司)
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