昨年末に急遽来日も果たしたブルックリンの男女デュオ。ハードコア出身でビジュアル・アートも嗜むロバートと、クラシックのオーケストラを背景にもつメアリー。ノー・エイジの片割れが主宰するPPMのDVDコンピにも参加するなど西海岸のインディーズとも交流が深い彼らだが、そのサウンドは実に今のNYっぽい。つまり大雑把にいえばエレクトロニックでトライバルで、サイケデリック。トイトロニカ的な丸みを帯びた電子音と歪に転がるビートがダビーに溶け合い、そのアブストラクトに変形するトラックの上を漂うように女性ボーカルが神秘的なエコーを聴かせる。さながらアニマル・コレクティヴやギャング・ギャング・ダンスの甥っ子姪っ子といった趣も。ブラック・ダイス(新作、楽しい!)のようなエクスペリメンタリズムは希薄で、ポップで人懐っこく、童心で音と戯れるような感覚が愛らしい。形態的には今月号でインタビューを掲載したテレパシーにも似てるが、こちらは“踊れ、マザーネイチャー”的な精神というか。自然音のサンプリングも混ぜ込む凹凸感豊かな陽性のナチュラル・サイケデリアは、例えばパンダ・ベアがアニコレの新作に抱いた「水」のイメージにも近い。アンビエンスな浮遊感と、そのゆらぎを通して放つ光や色彩。安易なサイケデリアを標榜するバンドが跋扈する昨今、彼らが描きだす音の幻視性や覚醒感は得がたく魅惑的だ。本作は、昨年スリル・ジョッキーと契約後リリースされた初期音源集とファーストを一枚にまとめた独自編集盤。ファイアリー・ファーナセスと並ぶ同レーベルの看板男女デュオとしてご贔屓を。(天井潤之介)