迫る危機感との対峙

フォールズ『エヴリシング・ノット・セイヴド・ウィル・ビィ・ロスト・パート2』
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ALBUM
フォールズ エヴリシング・ノット・セイヴド・ウィル・ビィ・ロスト・パート2

先月号のインタビューでヤニス・フィリッパケスが「ここまで欲求不満をぶつけたことがないってくらい、今の自分達の抱えている激しい怒りが音に炸裂してる」と自信たっぷりだったのを裏付ける音が詰め込まれているのだが、それが先日の〈気候行動サミット 2019〉でのスウェーデンの16歳、高校生であり環境活動家グレタ・トゥーンベリの怒りの言葉、表情と重なるかのようなアルバムだ。

環境破壊、監視社会等々、ディストピアの絶望的な光景を描いた前作『エヴリシング・ノット・セイヴド・ウィル・ビィ・ロスト・パート1』は、ヘヴィなテーマを、巧みにエレクトロ・サウンドを交えて展開したもので、高いトータリティのせいもあってじつに聴きやすく、終わると、ドーンと手ごたえがあるアルバムであった。そして夢も希望も持てないような光景を歌った後に来るものは、との問いに真っ正面から答えるかのような世界が広がるのが『〜パート2』となっている。

最初から対になる二連作と公表されていたから、余計に前作のあの殺伐とした気持ちをどう回収していくかが興味津々だったのだが、力強いギター・ロックを前面に各テーマにぶち当たる姿勢が何とも頼もしく、力を貰える。また2枚組とか同時発売にしなかったのは正解で、アルバム単位で聴かれることすら難しくなりつつある時代に、巨大なテーマに取り組み、それを十二分に展開しても、最初から2枚組という設定だけで敬遠されることもあるだろうから、今回の、〈これはいったいどうなるの〉と興味をつなげるやり方はよかったし、実際、その使命を帯びた楽曲たちの出来自体がとてもよい。

とくにアルバム中もっともエナジーが直撃する先行シングルでもあった“ブラック・ブル”は圧倒的で、視界すべてを覆う廃墟の光景から力強く立ち上がっていくかのようだし、アラン・シリトーの名作『長距離走者の孤独』をモチーフとした“ザ・ランナー”もそれに並ぶ激しいトラックだが、全体のコンセプトの中での位置づけが明快だから極めてスマートに迫ってくる。

7曲目にインストの“イカリア”をインターミッションのように置き、“10,000 フィート”、“イントゥ・ザ・サーフ”、“ネプチューン”と流
れていく後半がとくにみごとで、二連作である必然が提示されているし、10分以上にもおよぶラストの“ネプチューン”の混沌とした世界は、彼らなりの誠実な表現だろう。安直で根拠のないポジティブな音では何も救われないほどの危機感に立った音は、グレタに届けられているかのようだ。 (大鷹俊一)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』11月号に掲載中です。
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フォールズ エヴリシング・ノット・セイヴド・ウィル・ビィ・ロスト・パート2 - 『rockin'on』2019年11月号『rockin'on』2019年11月号
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