19年3月初来日時の渋谷クラブクアトロ急遽1日2公演(!)やフジロックでのアクトを通して、ここ日本でも水面下で異様な熱量を湧き起こしているインスト3ピース=クルアンビン。ファンク/ブルース/R&B/ダブなどのエッセンスを濃密に感じさせながらも、ありとあらゆるジャンルやスタイルをマーク/ドナルド/ローラ3人それぞれの演奏の引力によって遠心分離して自由闊達なアンサンブルの軌道を編み上げていく、ゆるやかでスリリングな音の磁場。ジャム・バンドとは趣を異にした三位一体DJ感とでも言うべきプレイの抜き差しによる、音の隙間に魂の楽園を描き出すようなクールな包容力――。そんな彼らの「生」の妖力を、自身初の公式ライブ・アルバムとなる今作は如実に伝えている。
18年11月にLP1500枚のみの限定盤として発売されたライブ・アルバムの初CD化となる今作。“Como Me Quieres”、“Lady and Man”など、2ndアルバム『Con Todo El Mundo』の楽曲を中心に収録した今作が物語るのは、サイケデリックという空間と概念そのものを「60〜70年代の非日常的な逸脱の表現」という時代感の足枷から解き放って、根源的な訴求力を持った現代のポップとして再構築するクルアンビンの鮮烈な在り方だ。3人が織り成すサウンドスケープは個々のルーツ感よりも、そのエッセンスの配置の妙によって生まれる無国籍グルーヴの方に力点が置かれているし、ローラのウィスパーやマークの呪術的なギター・ソロは、シンプルながら「解けない謎」でもある彼らの音の存在感をよりいっそう高めている。ドクター・ドレーやア・トライブ・コールド・クエストといったヒップホップ・クラシックのメドレーに滲む融通無碍な柔軟性まで、底知れない才気を感じさせる1枚。(高橋智樹)
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