「表現者」とは、彼女のことだ

PJハーヴェイ&ジョン・パリッシュ『ア・ウーマン・ア・マン・ウォークト・バイ』
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ALBUM
PJハーヴェイ&ジョン・パリッシュ ア・ウーマン・ア・マン・ウォークト・バイ
前回の『ダンス・ホール・アット・ラウス・ポイント』以来13年ぶりとなるジョン・パリッシュとの共同名義作品。1曲目“ブラック・ハーテッド・ラヴ”からガツンとカッコいい! 必ずアルバムごとに異なったサウンド・アプローチをとるPJハーヴェイは、前作ではいきなりピアノ主体の作風を披露してリスナーを驚かせたが、今回はバンジョーや古風なオルガンなどの音色をシンプルかつ音響的に配置した多彩なアレンジで聴かせる。ただ、それ以上にここでは、ポーリーのシンガーとしての表現力の幅の広さ/凄まじさを強く再認識させられた。神経症的な高音から、艶っぽい囁き、ドスの利いた低音……8曲目“ピッグ・ウィル・ノット”での絶叫シャウトには、軽く尿ば洩らしました。

バックには、かつてキャプテン・ビーフハートに在籍し、その後もフランク・ブラックをはじめ一筋縄ではいかぬ人脈に関わってきたエリック・ドリュー・フェルドマンや、新譜が待ち望まれるオートラックスの素晴らしい女性ドラマー=カーラ・アザールらが参加。ついでに書くと、今回ジョシュ・クリングホッファは不参加なので、表題の「過ぎ去った男」というのは彼のことか?と妄想したが、このタイトルは“シックスティーン〜”や“ザ・チェアー”などと一緒にジョンが先に決めたもので、その言葉を手がかりにポーリーが歌詞をつけたとのこと(邪推御免)。

そしてPJハーヴェイは、これほどの傑作も「ひとつの通過点に過ぎないわ」と言わんばかりに、ex.バッド・シーズのミック・ハーヴェイをチームに加え、早くも次の作品へと取りかかっているそうだ。(鈴木喜之)
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