陽炎越しに響く、共演の必然

クルアンビン&リオン・ブリッジズ『テキサス・サン』
発売中
EP
クルアンビン&リオン・ブリッジズ テキサス・サン

当初は「シングルのB面想定」だったというテキサス出身アーティスト同士のコラボレーションが、そのまま独立したEPとしての世界観と妖力を備えるまでに至ったのは、ある意味必然と言える。エキゾチックな異次元ソウル/ファンク越しに時空を超越するクルアンビンと、ソウルの伝統をブラッシュ・アップしながら「その先」へ継承するリオン・ブリッジズ。その起点とベクトルこそ異なれど、両者の音は「音楽は境界線を越える」を皮膚感覚と反射神経レベルで血肉化した2020年最新版の証明に他ならないからだ。

淡々と刻まれるミディアム・テンポのビートとガット・ギターの音色、遠くから響くペダル・スティールの音色のマーブル模様が、陽炎と砂煙立ち昇る灼熱の風景を思わせる一方で、憂いとデカダンのせめぎ合うサイケデリアの極致の如き陶酔感も漂わせる表題曲“テキサス・サン”。ローラ・リー/マーク・スピアー/ドナルド・“DJ”・ジョンソンが奏でる白日のメランコリアにリオンの豊潤な歌声が融け合い、濃密な誘引力を醸し出している。ジャズ~フュージョン的な広がりを感じさせる“C-Side”のミステリアスなビート感&アンサンブルに、その妖艶さを失わないまま「歌もの」ど真ん中の訴求力を与えていたり、“Midnight”の悠久のスロウ・グルーヴの中で小気味好く歌の肉体性を躍動させてみせたり――といった今作の場面の数々は、クルアンビン&リオン・ブリッジズという2組の奇跡的なまでのマリアージュぶりと、それぞれに研ぎ澄まされた才気の在り処を十分に指し示している。何より、どんな困難な演奏でもシーケンサーが再現してくれる時代にあって、歌とバンドが揺らぎ共鳴しながら生命そのものを編み上げていくような今作は、ひときわ魅力的に胸に響く。 (高橋智樹)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』4月号に掲載中です。
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クルアンビン&リオン・ブリッジズ テキサス・サン - 『rockin'on』2020年4月号『rockin'on』2020年4月号
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