歌の必然に駆られたアルバム

イヴ・トゥモア『ヘヴン・トゥ・ア・トーチャード・マインド』
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ALBUM
イヴ・トゥモア ヘヴン・トゥ・ア・トーチャード・マインド

2018年、Warpと契約してリリースされた『セイフ・イン・ザ・ハンズ・オブ・ラブ』は素晴らしかった。サイケ/ドローンをビート・ミュージック通過後の感性で再構築し、無国籍なメロディから情緒を立ち上らせる。イヴ・トゥモアことショーン・ボウイの繊細にしてふくよかな内面世界を見事に表現していた。あれから1年半を経て届けられるニュー・アルバム『ヘヴン・トゥ・ア・トーチャード・マインド』は、エクスペリメンタルなビート・ミュージック新世代の代表格として語られるようになった彼の新局面を告げている。昨秋のシングル“Applaud ft. Hirakish &Napolian & Anthem”は、ラフでオーガニックなヒップホップ・ビートを基調にクィアでグラマラスなムードを漂わせる作風となっていたが、本作から最初のリード・シングルとなる“Gospel For A New Century”では、更に大胆な歌モノへと移行したのである。

“Gospel For A New Century”では、李松娥(イ・ソンガ)による70年代コリアン・ファンクをサンプリングするなど、情緒のエキゾ志向を加速させている。しかし、前作アルバムまでのエレクトロニックな作り込みは後退し、ビート・プロダクションはより生々しい響きとなった。激しいファズ・ギターがフィーチャーされた直近のシングル曲“Kerosene!”にしても、バンド・セットによるライブでの再現性、そして何より自身の言葉にフォーカスしたアルバムと言えるだろう。膨大な音楽的情報量を注ぎ込んだ前作から一転、ベーシックなビート構築とオルタナ・ロックの融合によって、どれだけ即効性を備えた音楽を生み出すことができるか。そんなトライアルだ。悩ましいラブ・ソングとして、届けるべき対象が明確になった歌の数々からしても、目的意識の変化が窺えるアルバムである。(小池宏和)



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イヴ・トゥモア ヘヴン・トゥ・ア・トーチャード・マインド - 『rockin'on』2020年5月号『rockin'on』2020年5月号
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