コロナ禍により世界中でこれまでの生のライブという場が失われて久しいが、ザ・レモン・ツイッグスがバンドキャンプでライブ・アルバムを独占リリースした。収益はすべてホームレス支援連合「Coalition for the Homeless」のCOVID-19対応に寄付される。頭部をすっぽりと袋で覆った状態でマイクに向かうジャケットも示唆的だ。
2018年の『ゴー・トゥ・スクール』ツアーでのライブ音源が収められている。アルバムと同じく“Never In My Arms, Always in My Heart”で幕を開け、締めも同様に(物語のエピローグ的な“Go to school”は抜きにして)“If You Give Enough”。人間として育てられるチンパンジー、シェーンの身にふりかかる様々な災難と闇。引き裂かれていく心の物語の始まりと終わりを定位置に配しつつ、デビュー作『ドゥ・ハリウッド』の曲も随所に入れ込む。
トッド・ラングレンもビートルズもビーチ・ボーイズもクイーンもデヴィッド・ボウイもザ・フーもT・レックスも……偉大な先達のDNAを的確に継承しながらも、レモン・ツイッグスだからこその、美メロだだ漏れのスペクタクルなロックンロール・ショウが生々しく繰り広げられる。
息遣い、喝采、アジテーション、アンコールを求める歓声と拍手……熱狂が渦を巻く中での、あの美しい獣のようなパフォーマンスが鮮明に浮かぶ。ああ、早くまた目の前でライブが観たい。8月21日には『ドゥ・ハリウッド』を手掛けたジョナサン・ラドーを再び迎えたサード・アルバム『ソングス・フォー・ザ・ジェネラル・パブリック』をリリースする。先行公開されたグラム×サイケ・ポップな“The One”は、エバーグリーンでシンフォニックなロックンロールぶりがまたもや最高。 (小松香里)
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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』7月号に掲載中です。
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