ユーミン『COBALT HOUR』に影響されたFleet Foxesギタリストのソロ作、スプリングスティーン参加のBon Iver新曲、最近インタビューしたThe Lemon Twigs新曲などがBandcampに登場!! 毎月第一金曜の売上は100%アーティストへ

ユーミン『COBALT HOUR』に影響されたFleet Foxesギタリストのソロ作、スプリングスティーン参加のBon Iver新曲、最近インタビューしたThe Lemon Twigs新曲などがBandcampに登場!! 毎月第一金曜の売上は100%アーティストへ - pic by AKEMI NAKAMURApic by AKEMI NAKAMURA

ご存知の方もいるかも知れないが、コロナ禍に入って間もない3月20日に、Bandcampはインディ・バンドを支援するためにその日1日の売り上げについて、通常は15%のところなんと100%をアーティストに支払うという企画を行なった。

結果、なんとその24時間でファンは80万枚!!!ものアルバムを買い、マーチャンダイズなども含めると430万ドル(約4億5000万円)の売り上げを記録し大成功となった。普段の金曜日の15倍の売り上げだったそう。泣ける。これこそコミュニティの力だ。

予想外の大成功となったたため、引き続き同じ企画を月1のペースで行い、5月は710万ドルとさらに成功。毎月第一金曜日に行なわれるのだが、今月もその日がきた。具体的な時間は、日本時間だと8月7日(金)午後4時~8日(土)午後4時となる。

インディ・バンドの作品やマーチャンダイズを買おうと思っていた方は、今がチャンスです。

https://twitter.com/Bandcamp/status/1290684379866570752

それで、bandcampに参加しているアーティストの中から、最近の素晴らしい作品をいくつか紹介したい。

1)Bon Iver, “AUATC

前作『i,i』で、「季節が一周巡った」と語っていたジャスティン・バーノン。このひとつ前の曲“PDLIF”はシーズン5のエピソード1として発表されたが、この曲はシーズン5のエピソード2なので、四季が巡った後の新シーズンということだと思う。

“PDLIF”というタイトルは「Please Don't Live In Fear=恐怖の中で生きないで」という、コロナ禍にいる我々へ宛てられた感動的なメッセージだった。最新曲は「Ate Up All Their Cake=ケーキを全部食べ尽くした」という、儲け主義への反発の曲だ。ジャスティンが、ツイートでコメントしていた。

「僕らは資本主義とそれへの組織的関与に対する闘いに、注意を呼び掛けたいと思っている。我々は自分たちの特権を認識し、この資本主義を世界中で変えていくための基盤を利用したいと思っている」


そう聞くとイラストの意味も分かるのではないか。
https://boniver.bandcamp.com/track/pdlif

また、「この曲は資本主義の危険を暴き、コミュニティの力を祝福している」とも語っている。この曲のコーラスにブルース・スプリングスティーンという驚きの大物が参加しているのも納得できるのではないか。それ以外にも、ジェニー・ルイスなどが参加している豪華な1曲だ。

MVに出演しているダンサーも素晴らしい。驚くのは曲が2分22秒しかないこと。その中に、アレンジの変化の仕方も含めたくさんの情報を詰め込んでいるが、一つの楽曲として破綻していないところが素晴らしいと思う。それ自体が「コミュニティの力の祝福」でもあると思う。


さらに「エピソード」という発表の仕方も今にぴったりだ。アルバムが完成して1曲ずつシングルとしてその中から発表する方法ではなくて、現状に反応しながら完成させているように思う。また、彼の曲のタイトルは最近記号化しているが、今回も文字の始めを取ってタイトルにしていてそれも興味深い。ファンなら知っているが、今回のシングルは実はデモテープが何年も前から存在した。

それを今の空気で完成させて発売したのだろう。

ジャスティン・バーノンは、曲の発表と同時に様々な団体への参加と支援を呼びかけている。

2)フリート・フォクシーズのギタリスト、スカイラー・シェルセットが、松任谷由実や三島由紀夫から影響されたソロ作を発表。嶺川貴子も参加。もう全曲聴かせてもらったのだが、素晴らしい。

フリート・フォクシーズが2018年に来日公演をした際、坂本龍一の誕生日を祝って、ギタリストのスカイラー・シェルセットがYMOの“Behind the Mask”を演奏したのを覚えているだろうか?

日本のライブだけで披露された特別な瞬間だったが、そんな彼が8月28日にソロ作『Back in Heaven』を発売する。先に全曲聴かせてもらったのだが、これが素晴らしい作品だ。すでにシングル“Cobalt”が発表されている。

本人に訊いたらこの曲は、なんと松任谷由実の『COBALT HOUR』に影響されたという。この曲を書いている時に、一番聴いていた曲だそうだ。そしてアルバムも素晴らしいのだ。ちなみに、彼はアルバムの予約分の売り上げはすべてACLU(アメリカ自由人権協会)に寄付すると言っている。ミュージシャンだってツアーができなくて大変だと思うのに、少しでも社会に貢献しようとしているところに感動する。

もし予約するなら、Bandcampが売り上げの100%をアーティストに支払う日にするのがベストだと思う。
https://skylerskjelset.bandcamp.com/album/back-in-heaven

1曲1曲が本当に素晴らしいアルバムなのだが、彼はフリート・フォクシーズの活動の他に、Beach Houseのツアーに参加していたりもするので、ソロ作となるとシューゲイザーよりの作品になるのは理解できる。しかし、それだけではないところがこの作品を特別にしていて、それは日本の音楽から受けたインスピレーションと大きく関係している。彼自身、この作品の「多くの曲は僕が好きな日本のミュージシャンの影響を受けている」と語っていた。のみならず、「歌詞では三島由紀夫、吉本ばなな、谷崎潤一郎、さらには『エヴァンゲリオン』からも影響を受けている」のだと言う。

ちなみに、“Sayoko”というこのアルバムの中でも際立って美しい曲があるのだが、それは三島由紀夫の作品に関連するキャラクターの名前にちなんで付けたのだということ。

また、「とりわけYMOとそれぞれのメンバーに影響されている」とも言っていたが、曲の骨格はポップで強靭で、間違いなく日本のミュージシャンからの影響が聴こえてきて、そのアレンジがまた1曲ずつ凝っていて、それがエモーショナルで感動的なのだ。時々フリート・フォクシーズ的なアレンジも聴こえてきて、彼がどのような効果をあのバンドにもたらしているのかもよく分かるのだ。

フリート・フォクシーズのメンバー始め、ザ・ウォークメンのHamilton Leithauserなども参加。嶺川貴子が参加している曲もある。そうそうたるメンツが参加しているが、それぞれが、彼がここで描こうとしている強烈なビジョンのパズルをひとつずつ支えているのが良く分かる。

日本で集めたパーカッションを使っていたり、日本で録音した電車の音なども使われている。ここまで日本に関わる作品なので、ぜひもっと詳しく訊きたいと思ってお願いしたら取材にも答えてくれることになったので、ぜひお楽しみに。

『Back In Heaven』というタイトルの「Heaven」とは何を差しているのか、も含め訊いてみたいと思う。これからアルバムの発売まで毎週金曜日にシングルを発表していくそう。次の曲は“Angel”だそう。お楽しみに。

実は、彼のもうひとつのバンドとしてのプロジェクトであるNYバンドのYeah Babyも今週金曜日にデビュー作『Neptune Hotel』を発表する。ちなみに、彼らも予約分の売り上げはLiberty at the A.J. Williams-Myers African Roots Centerに寄付されるそうだ。
https://yeahbabymusic.bandcamp.com/album/neptune-hotel

スカイラーを含めた、NYを拠点とした4人バンドのYeah Baby。この作品は“Heaven”というよりは夢と現実の間を彷徨うような内容だ。アルバムのタイトルは、バンドを創設した2人、Sean KwonとHanna Whiteが住んでいたブルックリンのアパートの前で夜になると光るホテルのイルミネーションから取ったものだという。

夢に見ただけで実在しないのではと思って調べたら実際にあるホテルだった。アルバムは始まった瞬間にThe xx を彷彿とさせるドリーム・ポップ的なサウンドで、今まさに永遠の夢か、はたまたカオスの狭間にいるような我々のリアルを刺激的に映し出すような作品だ。

“No Video”

“Moonflower”

シアトルのラジオKEXPでインタビューに答えている。そこでアルバムは全曲聴ける。
https://www.kexp.org/read/2020/8/6/fleet-foxes-side-project-yeah-baby-album-stream-interview/

3)スフィアン・スティーブンスが今歌う「アメリカ」。

スフィアンはこれまで『ミシガン』、『イリノイ』というタイトルのアルバムを発売し、かつては50州のタイトルのアルバムを発売すると言っていたが、全部ふっとばして“America”というタイトルの新曲を発表。しかも、いきなり12分以上あって尋常じゃないし、独立記念日に合わせて発表された。

またアナログ盤のB面の曲は“My Rajneesh”でこれも10分以上。これだけ長い時間かけて語らないといけないことがあるということだろう。

さらに来月発表のアルバム『The Ascension』は、キリストの昇天の意。

スフィアンは、“America”について「アメリカのカルチャーの病へのプロテスト・ソング」だと語っている。

「この曲は2015年の『Carrie & Lowell』のセッションで作ったものだったんだけど、その当時はあまりに意地悪な歌詞だと思ってお蔵入りにしたんだ。

だけどそれから数年経ってこのデモを聴いて、ここで予見されていることに驚いた。怒りに満ちた、口が達者なだけの曲だと見なして無視することはもうできないと思った。その当時はそれが分からなかったけど、この曲は間違いなく予言と真実を的確に描いている。それに気付いた時に、次に何をしなくちゃいけないのか、はっきりと道が見えたんだ」


4)ザ・レモン・ツイッグスにインタビューした。最新作はキッスを参考にした?

最新号でザ・レモン・ツイッグスの兄ブライアンにインタビューした

コロナ禍で、LAの彼女の実家に滞在しているという彼に電話でインタビュー。NYからLAに到着した後、しっかり2週間自己隔離し、検査もして陰性だったと言っていた。コロナ禍では、自分の作品よりも他人の作品をとことん聴いていると言っていた。今ハマっているのは、アレン・ギンズバーグが歌う曲。彼が詩を朗読するのは知っていたけど、歌を歌うのは知らなかったと。ボブ・ディランと共演する曲を見つけて何回も何回も聴いていると言っていたのが印象的だ。

それがこの曲。


前作では、超野心的にロック・オペラに挑戦した彼ら。「大衆のための歌」と題されたこの最新作は、なんとキッスを参考にした?! 是非インタビューを読んでください。

彼らは、Bandcampでライブ音源を発表している。このアルバムの収益は、Coalition of Homelssに寄付されるそうだ。
https://thelemontwigs.bandcamp.com/album/the-lemon-twigs-live

さらに最新作はこちら。発売は8月21日。

これまで発表された新曲はいちいち歌詞が切ないのだ。


5)アノーニが、ボブ・ディランとニーナ・シモンの曲をカバー。

アノーニが久しぶりに2曲リリース。しかもボブ・ディランのカバー“It's All Over Now, Baby Blue”とニーナ・シモンのカバー“Be My Husband”。
https://anohni.bandcamp.com/album/it-s-all-over-now-baby-blue-b-w-be-my-husband

アノーニはプロデューサーのHal Willnerに勧められて数年前にボブ・ディランの曲をカバーしていたそう。最近になって聴いてみて、「この曲がどれだけ今を言い当てているのかと思って衝撃だった。現在ともしかしたら未来に対する痛みまでも、ニュアンスのあるノスタルジアの中で歌っていると思った」と語っている。


「この時代と嫌な大統領がすぐに終わってくれればいいと思う。狂信者と世紀末的金持ち達は、腐った小さな洞窟の中に早く這いつくばって戻ってくれればいいと思う」


さらにそれがBLMムーブメントやOccupyムーブメントに繋がったことを喜んでいる。

さらにニーナ・シモンの曲については、彼女が1991年にカーネギーホールで観たライブについての思い出を語っている。

「コンサートはしっかりと宣伝されていなかったから会場は半分しか埋まっていなかった。それなのに彼女は、その晩威厳を持って歌い続け、本当に最高だった。5、6回アンコールをした。私にとっては彼女は20世紀最高のミュージシャンだと思う。

曲は多く書かなかったけど、彼女が書いた曲はその時代の最も深い曲だった。“Be My Husband”はそのうちの1曲。歌詞は、恋愛と服従の矛盾について歌っている」


6)Tabaccoの新曲にトレント・レズナーが参加。

Tabaccoがこれから新作を発表するが、シングルでそのタイトルも"Babysitter" にトレント・レズナーが参加している。
https://tobaxxo.bandcamp.com/track/babysitter-feat-trent-reznor

Tabaccoは私も観たNINのツアーの前座を務めていたし、それ以前にTabaccoの『Sweatbox Dynasty』をトレントがその年のベストアルバムに選んでいた。この曲は2人が「俺が新しいベビーシッターだ」と意味不明のことを叫ぶ、死ぬほど不気味な曲。不気味すぎて途中から面白くなる。というところが今なのかもしれない。

というわけで、長く書きすぎたけど、アーティスト達の言っていること、やっていることに何かしらの繋がりも感じたりもした。もちろん今日だけじゃなくて良いのですが、Bandcampで聴きたいものを是非見つけてみてください。

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