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    スパイク・リー監督による、デイヴィッド・バーンの大ヒットブロードウェイ『アメリカン・ユートピア』映画版で、トロント映画祭が幕開け!今年はバーチャルで開催

    スパイク・リー監督による、デイヴィッド・バーンの大ヒットブロードウェイ『アメリカン・ユートピア』映画版で、トロント映画祭が幕開け!今年はバーチャルで開催 - pic by Courtesy of TIFFpic by Courtesy of TIFF

    去年のオスカーで、見事に初のオスカーを授賞したスパイク・リー監督。

    今年公開された新作『Da 5 Bloods』(Netflix)も評判が良いが、9月10日から開幕する北米最大の映画祭トロント映画祭の開幕で、なんと彼が監督した、デイヴィッド・バーンのブロードウェイ大ヒット作『アメリカン・ユートピア』が上映されることとなった。

    『サタデー・ナイト・ライブ』でこの舞台の再現パフォーマンスが行なわれた。

    https://www.instagram.com/p/B_Kw-eNj-tq/?igshid=1dk7b0pz8jpqk

    https://www.instagram.com/p/B9SUlcTp81S/?igshid=1iv0283px4xoc

    デイヴィッド・バーンは2018年に『アメリカン・ユートピア』を発表した後、ブロードウェイショーとほぼ同じ内容でフェスに出たり、単独のツアーを行なったりしていた。私はフェスでも単独ツアーでも観ていたが、元々ブロードウェイショーにぴったりのフォーマットでもあったため、それをなんとブロードウェイで上演と2019年の終わり頃に聞いて、驚きだがなんという素晴らしいアイディアだと思った。

    デイヴィッド・バーンはこれまでにも、ジャンヌ・ダルクやイメルダ・マルコスなどを主人公にしたミュージカルをオフ・ブロードウェイで上演しヒットを記録してきた。私はほとんど観ているが、どれも彼にしかない独自の視点でミュージカルに革新をもたらしていた。

    それが今回大きな形で実を結んだのだ。

    『アメリカン・ユートピア』というタイトル通り、この時代に希望を与えてくれると高く評価されていた。また、何より喜ばれていたのは、デイヴィッド・バーンの音楽を知らないような観光客達からも大歓迎されたことだ。限定上演だったが、興行成績で劇場の新記録を達成。チケット代の定価の平均は$211。一番高い席は定価で$650だったが、チケットは常に売り切れ。

    なので、延長に延長が繰り返されたのだ。本来ならまだ上演が続くことになっているのだが、今は残念ながらブロードウェイが閉鎖されているので今後どうなるのか分からない。

    そこでこのスパイク・リー監督による映画が完成。素晴らしいニュースだ。これは舞台をそのまま収録したライブ映画なわけだが、このミュージカルが特殊なだけに、スパイク・リーがどのように舞台のドラマチックな効果を映画なりに活かしたのか、またどのように独自の視点で撮影したのかが楽しみだ。

    今年のトロント映画祭は、バーチャルで開催されることになっている。私も毎年行っている大好きな映画祭だが、今年は残念ながら行けない。レッドカーペットなどもバーチャルで行なわれる予定だ。ニコール・キッドマンや、タイカ・ワイキキ、マーティン・スコセッシ、ライアン・ジョンソン、ジェイソン・ライトマン、イザベル・ユペール、アルフォンソ・キュアロンなども登場することになっている。

    すでに発表されているその他のラインナップの注目すべき点は、以下の通り。

    1)ハル・ベリー、レジーナ・キング、河瀬直美、西川美和監督作など、女性監督作がなんと全体の46%!

    今年発表されたアカデミー賞の監督賞では、素晴らしい女性監督がいたにも関わらず5人全員が男性だったことが大批判された。トロント映画祭は女性監督に可能な限り平等であろうとしている。上映される作品のなんと46%が女性監督作だ。これは大評価したい。

    河瀬直美監督は、カンヌ映画祭にもノミネートされた『朝が来る』。

    https://twitter.com/asagakuru_movie/status/1272967309645058048

    西川美和監督は、『素晴らしき世界』。

    https://twitter.com/TIFF_NET/status/1288851532889362440

    2)俳優の初監督作が多い。

    ハル・ベリーの初監督作にして、自らも主演し元MMAファイターを描いた『Bruised』。

    レジーナ・キングの初監督作『One Night in Miami』。同タイトルの舞台の映画化。彼女は今年最もエミー賞にノミネートされた『ウォッチメン』で主役を演じているばかりか、その前の年は、バリー・ジェンキンス監督作で、オスカーも授賞。俳優として大活躍している最中に満を持して長編で監督に挑戦。

    ヴィゴ・モーテンセンの初監督作『Falling』。彼自身が主演で、ゲイの男性を演じる。彼の父親が認知症となり、持っていた農場を売り、彼と彼の夫と同居することになる。父は保守的で、ゲイ差別主義者。彼がこの前に出演した作品は『グリーン・ブック』で、トロントで観客賞を授賞し、オスカーも授賞した。

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    3)個人的に楽しみな作品

    個人的に最も楽しみにしているのは、クロエ・ジャオ監督、フランシス・マクドーマンド主演のロードムービー『Nomadland』だ。日本で観た人は少ないかもしれないが、彼女の前作『ザ・ライダー』は個人的には2017年のベスト映画だったと思っている。その映画では俳優ではない家族を起用し傑作を作り上げた。

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    今回は、演技派でもトップクラスのマクドーマンドからどんな映画を引き出したのか楽しみで仕方ない。また、『ザ・ライダー』とは真逆という作品だが、この後は、マーベルの『ジ・エターナル』の監督もする。

    ケイト・ウィンスレットとシアーシャ・ローナンがカップルを演じる『Ammonite』。ふたりとも名優なので演技のぶつかり合いが楽しみ。

    4)それ以外にも豪華なキャスト、監督が勢揃い。たくさんありすぎて書けないメンツが集合。現時点で発表されているのは以下の通り。

    女性監督作を約半分にするという「可能な限り平等」な姿勢は、世界各国の作品が集まっていることからも分かると思うし、また、ヴィゴ・モーテンセンや、ケイト・ウィンスレットの作品のように、ゲイや様々な人達の視点があり、多様性のある映画祭にすることが目標とされている。

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    180 Degree Rule Farnoosh Samadi | Iran
    76 Days Hao Wu, Anonymous, Weixi Chen | USA
    Ammonite Francis Lee | United Kingdom
    Another Round (Druk) Thomas Vinterberg | Denmark
    Bandar Band Manijeh Hekmat | Iran/Germany
    Beans Tracey Deer | Canada
    Beginning (Dasatskisi) Dea Kulumbegashvili | Georgia/France
    The Best is Yet to Come (Bu Zhi Bu Xiu) Wang Jing | China
    Bruised Halle Berry | USA
    City Hall Frederick Wiseman | USA
    Concrete Cowboy Ricky Staub | USA
    David Byrne’s American Utopia Spike Lee | USA (Opening Night Film)
    The Disciple Chaitanya Tamhane | India
    Enemies of the State Sonia Kennebeck | USA
    Falling Viggo Mortensen | Canada/United Kingdom
    The Father Florian Zeller | United Kingdom/France
    Fauna Nicolás Pereda | Mexico/Canada
    Fireball: Visitors from Darker Worlds Werner Herzog, Clive Oppenheimer | United Kingdom/USA
    Gaza mon amour Tarzan Nasser, Arab Nasser | Palestine/France/Germany/Portugal/Qatar
    Get the Hell Out (Tao Chu Li Fa Yuan) I-Fan Wang | Taiwan
    Good Joe Bell Reinaldo Marcus Green | USA
    I Care A Lot J Blakeson | United Kingdom
    Inconvenient Indian Michelle Latimer | Canada
    The Inheritance Ephraim Asili | USA
    Lift Like a Girl (Ash Ya Captain) Mayye Zayed | Egypt/Germany/Denmark
    Limbo Ben Sharrock | United Kingdom
    Memory House (Casa de Antiguidades) João Paulo Miranda Maria | Brazil/France
    MLK/FBI Sam Pollard | USA
    The New Corporation: The Unfortunately Necessary Sequel Joel Bakan, Jennifer Abbott | Canada
    New Order (Nuevo Orden) Michel Franco | Mexico
    Night of the Kings (La Nuit des Rois) Philippe Lacôte | Côte d’Ivoire/France/Canada/Senegal
    Nomadland Chloé Zhao | USA
    No Ordinary Man Aisling Chin-Yee, Chase Joynt | Canada
    Notturno Gianfranco Rosi | Italy/France/Germany
    One Night in Miami Regina King | USA
    Penguin Bloom Glendyn Ivin | Australia
    Pieces of a Woman Kornél Mundruczó | USA/Canada/Hungary
    Preparations to Be Together For an Unknown Period of Time (Felkészülés meghatározatlan ideig tartó együttlétre) Lili Horvát | Hungary
    Quo Vadis, Aïda? Jasmila Žbanić | Bosnia and Herzegovina/Norway/The Netherlands/Austria/Romania/France/Germany/Poland/Turkey
    Shadow In The Cloud Roseanne Liang | USA/New Zealand
    Shiva Baby Emma Seligman | USA/Canada
    Spring Blossom Suzanne Lindon | France
    A Suitable Boy Mira Nair | United Kingdom/India (Closing Night Presentation)
    Summer of 85 (Été 85) François Ozon | France
    The Third Day Felix Barrett, Dennis Kelly | United Kingdom
    Trickster Michelle Latimer | Canada
    True Mothers (Asa Ga Kuru) Naomi Kawase | Japan
    Under the Open Sky (Subarashiki Sekai) Miwa Nishikawa | Japan
    Violation Madeleine Sims-Fewer, Dusty Mancinelli | Canada
    Wildfire Cathy Brady | United Kingdom/Ireland

    開催は9月10-19日まで。今年もレポートする予定なので、お楽しみに。

    https://twitter.com/TIFF_NET/status/1275791653316558848
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