ロマンティックの最新進化形

ジョン・レジェンド『ビガー・ラヴ』
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ALBUM
ジョン・レジェンド ビガー・ラヴ

今のアメリカのR&Bシーンにおいて、ジョン・レジェンドほど「ロマンティック」という形容詞がよく似合う男性ボーカルは、他にいないだろう。ウソだと疑うのなら、2017年に公開された映画『美女と野獣』(エマ・ワトソンがベル役だった実写版リメイクの方、ね)で、彼がアリアナ・グランデとデュエットした主題歌を聴いてみればいい。ディズニー史に燦然と輝く「ロマンティシズムの極致」と呼ぶべき名バラードに、あそこまで「さらっと」自然に溶け込めちゃう人なんて、他にいるはずがない。きっと企画会議でも、キャスティング決定までに5秒もかからなかったんじゃないだろうか。

本作『ビガー・ラヴ』は、そんなレジェンドにとって、約2年ぶりのリリースとなる通算7枚目の最新アルバム。と言っても、前作『レジェンダリー・クリスマス』はいわゆる企画モノのクリスマス・アルバムだったので、全曲がオリジナル・ソングの作品となると、16年の『ダークネス・アンド・ライト』以来、実に4年ぶりとなる。プロデューサーは『レジェンダリー〜』から続投で、今回もラファエル・サディーク。芸風も近いし、きっと、よっぽど気が合うふたりなんだろう。

収録曲数は、全16 曲(日本盤はリミックスなどのボーナス・トラック2曲を追加した全18曲)。そのほとんどの曲がいわゆる「ロマンティック・バラード」なのだけど、だからと言って、一本調子の冗長なバラード集にはなっていないところがこのアルバムの地味な凄さだと思う。たとえばチャーリー・プースが作詞作曲に参加した“アイ・ドゥ”なんて、実はジャスティン・ティンバーレイクが踊り出しちゃいそうなくらいファンキーな曲だし、ジャマイカ出身の女性シンガー、コフィーを客演に招いた“ドント・ウォーク・アウェイ”でのダンスホール的なトロピカル感も、聴けば聴くほど心地よい。どの曲もただロマンティックなだけじゃなく、どこかがさりげなくかっこよくて、1ランク上のゴージャス感とは、こういうことなのだ。

もちろん、レジェンドの十八番である歌い上げ系のバラードもちゃんと堪能できるアルバムなので、その点もご安心を。中でも真骨頂なのは大ラスの“ネヴァー・ブレイク”。恋人同士が永遠の愛を誓い合う歌は、クライマックスに向けてノン・リミットで大空に舞い上がりつづけ、やがてはさらに大きな「人類愛」についての讃歌のようにさえ響き始める……。コロナとか、ソーシャル・ディスタンスとか、そんな時代だからこそ、みんな、もっともっとジョン・レジェンドを聴こう。 (内瀬戸久司)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』11月号に掲載中です。
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ジョン・レジェンド ビガー・ラヴ - 『rockin'on』2020年11月号『rockin'on』2020年11月号
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