パーティーのない季節に

アヴァランチーズ『ウィ・ウィル・オールウェイズ・ラヴ・ユー』
発売中
ALBUM

1stから2ndまでは16年かかった。でも2ndからこの3rdまではたったの4年である。いや、4年でも十分に長いが、それでもファンにとっては「たったの」なのだ。

前作『ワイルドフラワー』でわかってしまったが、もう彼らがこの先大きく変化することはないだろう。無数のサンプリング・ソースからの雑多な素材を片っ端からカットアップ・コラージュした、無類に人懐っこいダンス・ミュージック、という個性に揺るぎはない。あらゆる音楽をぐちゃぐちゃにミクスチャーして、キャッチーで、メロウで、レトロ・フューチャーなポップ・ソングとして昇華させる、その手際の鮮やかさ、センスの良さにまったく衰えはなく、しかもデビューから20年を経ても、未だに新鮮だ。とはいえ、当時と全く同じというわけでは、もちろんない。

アヴァランチーズがデビューした2000年といえば、情報万能主義/消費至上文化がピークにあった時期だが、あの時代の楽観的で無邪気な雰囲気というよりは、メロウでメランコリックな面が強く感じられるのが本作の特徴だ。

アルバムのテーマは「絶え間ない波動で表される永遠の愛」。「光、音、精神の振動の関係を探求し、人間の声を探求し、『人間とは本当は何者なのか? 死んだらどうなるのか?』などの大きな疑問をも追求している」(メーカー資料より)という哲学的なもの。従ってアルバムは享楽的というよりは内省的であり、思索的であり、さまざまなサンプル・ノイズは賑やかというよりは、ある種のアンビエント・ノイズのような静謐な印象を与える。新型コロナウイルスで世界の様相が一変した2020年という、いろいろな意味で節目となりそうな年にふさわしい音楽と感じた。(小野島大)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』1月号に掲載中です。
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『rockin'on』2021年1月号