昨年春に高校を卒業し、新しい出会いに溢れているはずだったのに、すべてはマスク越し。触れ合うこともままならない。それなら、せめて音楽で繋がりたい。昨年11月にふたりのメンバーが脱退したことも含めて、ヤマシタカホ(Vo・G)の「もっともっと繋がりたい」という切なる想いが、純粋すぎるほど純粋に刻まれたアルバムだ。《心の奥もう破裂しそうなら/だれにも内緒で抜け出してさ/ここに逃げていいよ》(“MOVE ON!”)、《なにもかも投げ出したくなったとき/そばにいてくれたのなら/最高さ》(“大丈夫”)、《孤独がどれほどつらいものか/痛いほどわかるから/だからそばにいたいんです》(“そばにいたいんです”)――ヤマシタの透明な歌声は、誰かに寄り添うために響き、自分の孤独も聴き手の孤独も、どちらも優しく肯定して抱きしめる。その手を伸ばし続けるからこそ、《悲しみを捨てて/憧れが待つ場所へ/私がやらなきゃ誰がやる》(“ひかり”)と立ち上がる彼女の背中を、これから先たくさんの手が押すに違いない。「
ひかりのなかに」という名のもとに拓かれる未来が楽しみだ。(後藤寛子)
『ROCKIN'ON JAPAN』3月号より