《暫時雰囲気は敵/わがまま滑走/姿勢猫背中でゆとって達そう》って“dart”の最初のライン、意味はわかりそうでわからないけど、このバンドの音楽ってこういうもんだよなというのは非常によくわかる。曲自体も大胆というか乱暴というか、テンション高く音と遊び回っていたら展開も構成もどうでもよくなって、気がついたらなんかとんでもないところに来ていた、というような感じである。なんじゃこりゃ、とも言えるし、超いいじゃん最高、とも言える。どっちに取るかはあなた次第だが、少なくとも今年はこれをかっこいいと当たり前に言える時代だと思う。ソウルやファンク、R&Bにヒップホップにモダンジャズというブラックミュージックがベースにあり、基本的な偏差値とスキルはめちゃくちゃ高い(“risk”のアウトロで延々続くジャム感とか身悶えするぐらいかっこいい)が、
Kroiのすごみはそこよりも壊して崩していくマナーをちゃんと知っているところにある。“dart”なんてまさにそうだが、クールとナンセンスのギリギリを攻めて突破する切れ味のよさが生み出すスリルにとにかく痺れる。(小川智宏)
『ROCKIN'ON JAPAN』3月号より