昨年春の外出自粛期間に新曲のデモを「おうちdemoトラック」と題して次々にTwitter／YouTubeで公開していたCocco。自らを映す鏡でもある楽曲と向き合い続ける日々は、彼女の歌そのものに新たな飛翔力と包容力を与えるに至った――ということを、11作目のオリジナルアルバムとなる今作は如実に伝えている。

「おうちdemo」の楽曲も含む全15曲を収録した今作。紅蓮のリフパートと甘美な歌メロが寄せては返す“Supernova”、ハードなロックサウンドの狭間にジャジーな表情を窺わせる“夜喪女”、合唱コンクールばりのピアノ＆コーラスのアレンジで《青葉の輝き胸に染む／この想いを／わたしのいない世界で／いつか知るでしょう》と心の深淵を目映く描く“青葉”……今作でのCoccoのひときわ自由な楽曲と音像は、あらゆる制約や束縛を無効化するかのような躍動感に満ちたものだ。そして、雄大なサウンドスケープと《覚えてて愛って／もっとやさしいんだって／あなたはきっと／それを見つけるから》の一節が重なり合う“潮満ちぬ”。困難な時代の魂を重力から解き放つ、福音そのものの歌がここにある。（高橋智樹）

『ROCKIN'ON JAPAN』4月号より