2020年は、オール・スター・バンドでのワールド・ツアーの予定がすべて延期となってしまったリンゴ・スター。でも、どんな強力なウイルスも、彼の「ラブ&ピース」な音楽愛を止めることはできない。本作は19年の『ホワッツ・マイ・ネーム』以来、約1年半ぶりのリリースで、ステイ・ホーム期間中、感染対策を徹底した少人数でのレコーディングによって完成に至ったという、5曲入りの最新EP。こんな時代に頼れるのは、友達からのちょっとした助け――ウィズ・ア・リトル・ヘルプ・フロム・フレンズなんだ。
具体的に見ていくと、まず1曲目“ヒアズ・トゥ・ザ・ナイツ”は、稀代のヒットメイカー、ダイアン・ウォーレンの提供曲。「年末にみんな一緒に合唱してほしい」というリンゴ本人の紹介がすべてを物語るパワー・バラードなのだけど、圧巻なのはコーラス参加メンバー。ポール・マッカートニーを筆頭に、デイヴ・グロール、レニー・クラヴィッツ、シェリル・クロウ、エリック・バードン、ジョー・ウォルシュ、ベン・ハーパー、フィニアス、コリーヌ・ベイリー・レイなどなど……って、もはや2021年版“ウィ・アー・ザ・ワ
ールド”なのである。
2曲目“ズーム・イン・ズーム・アウト”は、ギターに元ドアーズのロビー・クリーガー、キーボードにベンモント・テンチらを迎えた軽快なロック・チューン。タイトルは、昨年Zoomでのネット会議が続いた日々へのオマージュ(?)だとのこと――そのぼやき的ネーミング・センスが実にリンゴらしくて、微笑ましい。3曲目“ティーチ・ミー・トゥ・タンゴ”は、前作『ホワッツ~』でも2曲でコラボしたサム・ホランダーの提供曲。パニック!アット・ザ・ディスコやウィーザーとの仕事でも知られるソングライターなのだけど、コンテンポラリーな音作りの中にも、レトロ・ポップなユーモアと遊び心が溢れていて、リンゴと相性がいいのも納得だろう。
4曲目の“ウェイティング・フォー・ザ・タイド・トゥ・ターン”はジャマイカ出身の名セッション・プレイヤー、トニー・チェンがギターで参加。本格的なレゲエのリズムが心地よい。ンチャ、ンチャ。そして5曲目“ノット・イナフ・ラヴ・イン・ザ・ワールド”は、TOTOのスティーヴ・ルカサー&ジョセフ・ウィリアムズとのコラボ曲。今回一の「ビートルズっぽさ」を隠し味に仕込みつつ、「今の世界には、愛が足りてない!」という歌詞が心の琴線にじわじわ響いてくる――2021年も、リンゴ・スターはやっぱり「ラブ&ピース」なんです。(内瀬戸久司)
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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』4月号に掲載中です。
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