ボビー・コールドウェルとのユニット、クール・アンクルの一員であり、アリシア・キーズらとの仕事で知られるジャック・スプラッシュを共同プロデューサーに迎えた3作目。
この起用が効果覿面だったようで、彼女の表現の根幹を成すアメリカーナが見事にアップデートされている。もちろん、伝統に根を張るその音楽の性質上、作曲面で不用意な変革がなされているわけではない。ふたりが例としてフェラ・クティのアフロビートやトニー・ヴィスコンティのストリングス・アレンジを挙げる、すなわち極めて広範囲かつジャンルレスな参照点を独特かつ確固たる美意識で取り入れたサウンド・メイクの妙にこそ、本作の凄さがあるのだ。
不変のルーツへの愛と、その本質を保ったままそれを「今の一歩先」へと進めるための創意工夫が両立した、ある種理想的な作品と言っていいだろう。(長瀬昇)
ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』5月号に掲載中です。
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