2019年にロンドンの100クラブで行ったチャリティ・ショーのライブ音源で、昨年12月にゼムの“グロリア”、今年1月にザ・フーの“マイ・ジェネレイション”、クリームの“サンシャイン・ラヴ”、ビートルズの“バック・イン・ザ・U.S.S.R.”がリリースされたのに続く第3弾となる。
今回は“ヘルター・スケルター”、“プリーズ・プリーズ・ミー”、“ヘイ・ブルドッグ”と、ビートルズ縛り。超豪華メンバーによるスーパーグループがキャパ350人の会場で演っているわけで、会場の熱気も凄まじいものだったはずだが、この音源では歓声などはほぼ排され、バンドの演奏をくっきりと浮かび上がらせる仕上がりとなっている。
昨年リリースされた彼らの1stアルバム『You've Always Been Here』は「ノーザン・ソウルの知られざる名曲をカバーすること」という明確なテーマを掲げロックンロールを炸裂させた傑作だった。各国に散るメンバーがデータをやり取りしながら制作したあの作品が緻密に構築したアンサンブルを基盤としていたのに対し、ここでの演奏はもっとずっと肩の力が抜けたものとなっている。
ジェイミー・デイヴィスがこのバンドについて語る「グレイトなミュージシャン達が集まって、ただ楽しみながら演奏している、何のプレッシャーも受けずにね。最高に楽しいからやっているだけなのさ」という言葉の通り、達人達が無邪気に名曲群を演奏し心底楽しんでいる様子が目に浮かぶようである。
とはいえ、“ヘルター・スケルター”でのニック・セスターのシャウトのハマりっぷりや、グレアム・コクソンのぶっ飛んだギター・ソロなど、各メンバーのストロング・ポイントはしっかり刻まれており、聴き手の側も十二分に楽しめる内容となっているのは流石の一言だ。(長瀬昇)
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