アンディ・ベル『アナザー・ビュー』

アンディ・ベル『アナザー・ビュー』
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ALBUM

気づいてみれば、アンディ・ベルがオールマイティになっている。本作は、昨年の初ソロ作『The View from Halfway Down』をいわゆる解体&再構築した3枚のEPをコンパイルしたものだが、じつは彼のオールキャリアそのものを解体&再構築した快作だ。

『The View 〜』は、ライドとは絶妙な距離感を置きながら彼の別PJ=GLOK直結のエレクトロを混ぜたりしつつ、タメのきいた洒脱なグルーヴを生み出していた。本作ではそんな「素材」の良さが活かされ、前半のリミックスはエレクトロっぽいのに彼のボーカリゼーションの滋味も加わってオーガニックな香りさえ漂い、後半の弾き語り、特に⑪と⑫はニック・ドレイクまでも彷彿させる醒めたリリシズムが響く。

全編が、悠久の時の流れに身を任せたような懐の深い清涼感に溢れている。50代のこなれ感と共に、新たな進化のビジョンを手に入れたようだ。(茂木信介)



ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』8月号に掲載中です。
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『rockin'on』2021年8月号