KEYTALKはメンバーたちが親しみやすさの塊であることもあってか、「只者ではない4人」という点について語られることが案外少ない気もするのだが、今作を聴けばすごさがよくわかる。たとえば“宴はヨイヨイ恋しぐれ”はタイトルにも表れている通り、無邪気に楽しみながら踊れる曲であるものの、このムードを裏打ちしているのは「壮絶」という言葉が似合うくらいの勢いに満ちた演奏だ。暴走気味な各々の演奏を絶妙に融合させて、聴き心地をキャッチー極まりない印象にしている様に痺れるほかない。3人目のボーカリストとでも言うべきギターフレーズが存在感を放っている“不死鳥”や“ラグエモーション”も、邪魔することなく歌メロを引き立てるギリギリのラインの突き方がすごい。そして、こういう離れ業ができるスキルがあるからこそ“Orion”のような曲もスタイリッシュに表現することができるのだろう。メンバー同士のコンビネーション、フォーメーションの巧みさによって多彩な表情を生み出せる「バンド」という表現技法の素敵さを体現しているという点で、本当にKEYTALKは揺るぎない。（田中大）

『ROCKIN'ON JAPAN』10月号より