昨年7月から開催された原作募集コンテスト「夜遊びコンテストvol.2」の大賞受賞作『大正ロマンス』を原作とした、YOASOBIの新曲“大正浪漫”。100年前と現代との「文通」をモチーフとした物語世界に、《どんな時も君の言葉を／待ち焦がれているんだ／生きる時代は違うけど／何度でも時間を越えて》といった丹念な言葉運びで「うた」としての必然を感じさせる詞世界。古き佳き大正の薫りにも昭和ポップスの歌謡感にもダイナミックに漸近線を描いていくような、Ayaseのサウンドメイキング――。そんな楽曲が浮き彫りにしているのは、時代考証や舞台設定にとらわれることなく一貫して「今、ここ」のリアルを鳴らし得ている、YOASOBIという表現の飛翔力そのものだ。そして、濃密に「和」を感じさせながら、常に近未来的な眩しさに満ちてもいるikuraの歌声が、《僕が僕の時代に見るその全てを／いつか伝えに行くよ》という最後のフレーズに豊かな生命力を与えている。それこそ「100年後を生きる人たちと楽曲を共有したい」と妄想したくなるポップの輝きが、ここには確かに宿っている。（高橋智樹）

『ROCKIN'ON JAPAN』11月号より