素っ気ないアウトロもいい

indigo la End『邦画』
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《邦画はやめとこうか/とりあえずキスをして/優しさを噛み締めよ》《洋画の字幕切って/お洒落なキスをして/不安なんてなくしちゃおう》――いくらでも解釈ができそうなこんなフレーズをさらっとサビの頭に入れてしまう、さらにその中の「邦画」というワードを曲タイトルにしてしまう、その挑発じみた余裕が憎い。さらに、pH-1をフィーチャーした前作“ラブ”とは打って変わって極限までシンプルに削ぎ落としたサウンドメイクもさすがとしか言いようがない。ドラマを追うことに気が行ってしまう「邦画」でもなく、セリフを翻訳して理解させようとする「洋画の字幕」すら不要の、つまり言葉や意味や筋に頼らない「今」を見つめよ、というこの曲のメッセージは、ダークな恋愛模様であると同時に、たとえば今の音楽やカルチャーに対する辛辣な批評としても機能するものなのではないかと思うし、川谷絵音の課題感を表現したものでもあるのではないかと思う。とにかくまずは黙って、《とりあえずキス》をするように、この曲の繊細なギターの弦の感触や声の質感やリズムの抑揚に耳を傾けよう。(小川智宏)