インスト主体のポストロックでハードボイルドな世界観を描いてきた過去3作から一転、全曲で歌がフィーチャーされたチバユウスケのソロプロジェクト4作目。本作ではノイジーなギターとごくシンプルなリズムからなるラフなトラックに合わせることで、チバのボーカルに真っ直ぐ焦点が当てられている。器楽的な成熟を志向してきたソロキャリアからはある意味で逆行しているようだが、この方向に舵を切ったのは、ロックンロールバンドでではなくひとりのシンガーとして今歌うべきことがあったからだろう。作中唯一のアコースティックなバラッドである最終曲“M42”で、チバはこう歌う。《異常が日常になり/銃声がソナタのように/聞こえ始めたから/僕は歌うことにした》と。《異常が日常になり/それは違うってことを/誰かに言わなくちゃ/僕は歌うことにした》と。どうにもおかしい今に対し突き付けるNOサイン。その切実さが背景にあるからこそ、本作の楽曲はこれまで幾度となく食らってきたこの男の野性を、ロマンティシズムを、純粋さを、オブラートを破ったかのように直接的に叩きつけてくるのである。(長瀬昇)
今、歌うべき歌、聴くべき言葉
YUSUKE CHIBA-SNAKE ON THE BEACH-『SINGS』
発売中
発売中
ALBUM