バニラズは、2010年代以降のロックシーンにおける最前線を堂々と闊歩し続けながら、決してシーンのトレンドに惑わされることなく、ただただ懸命にロックンロールの精神を鳴らし続けているバンドである。昨年のアルバム『PANDORA』は、ロカビリーやスカなどの多彩な要素を取り込んだ作品であったが、今回の新曲においては、カントリーのエッセンスが大胆にフィーチャーされている。今までもカントリー調の曲はあったが、これほどまでに突き抜けるような爽快感を誇るナンバーは今回が初めてだろう。軽快なビートが心地よく、数々の夏フェスのステージを鮮やかに彩っていく光景が目に浮かぶ。自らのルーツとなる要素を、開かれたポップソングへと昇華していくバランス感覚は、改めて本当にすごい。この曲においては、空を飛ぶことはできなくても、誰よりも速く、強く泳ぐことのできる「ペンギン」がテーマになっている。そしてその姿は、ロックシーンという大海を、自分たちだけのスタイルで駆けていくバニラズの姿に重なる。彼らには、いつまでも唯一無二の道を突き走り続けてほしい。（松本侃士）

『ROCKIN'ON JAPAN』9月号より