グッと重心を下げて放たれるヘヴィなバンドサウンド。その上を鮮やかに飛翔していくたおやかなサビのメロディ。とても壮大で、力強く、そして言葉を失うほどに美しい。僕は“Z.E.R.O.”を聴いて、彼らが自分たちの表現を大きく革新して新たな地平を切り開いたことに感動した。2023年春から、辻村勇太（B）が音楽活動の拠点をアメリカに移すことが発表されているが、これからも4人は、そうした大きな変化を味方にして、どんどん新機軸の楽曲を生み出していく予感がする。そう思わせてくれるほどに野心的な楽曲を、彼らがこのタイミングで届けてくれたことが本当に嬉しい。そして、もうひとつの収録曲が、6月に配信された“青”である。王道のブルエンサウンド。未来だけをまっすぐ見据えた渾身のメッセージ。そして、まるでセルフタイトルのような楽曲名。この曲が、今後のブルエンの新しい代表曲になっていくことは間違いないだろう。革新と王道。その両方をコンパイルした今作は、来年の春以降、新しい形でバンド活動を続けていく彼らの未来が、きっと明るいものになると確信させてくれる。（松本侃士）

『ROCKIN'ON JAPAN』12月号より