ミニアルバムを挟み、フルアルバムとしては約3年5ヶ月ぶりとなるが、2022年の
木村カエラはビルボードライブツアーにZeppツアーと、久々に有観客ライブのシーズンを駆け抜けてきた。これまでにも強い磁石のようにポップアイコンとしての魅力を放ち、無数の巡り合いを通して自身の音楽キャリアを築き上げてきたが、他者との距離感に敏感にならざるを得ない今日、彼女はこの『MAGNETIC』というアルバムを通して人と人が紡ぐ様々な物語にフォーカスしているのだと思う。シングル曲“Color Me feat.
マヒトゥ・ザ・ピーポー”や“井の頭DAYS feat.
SANABAGUN.”では、意外なほどポップで温かな化学反応を起こしながら掛け合いを繰り広げ、
iriが作詞・作曲を担当した“たわいもない”は悩ましい思いをありのままメロディに込めたエキゾチックソウルと化した。自身の作詞・作曲による“ノイズキャンセリング”は、守るべき自我へと寄せる祈りのような心持ちを歌い上げた美麗なチェンバーポップ。他者と関わり変化を続けながらも、孤独な時間に価値を見出すバランス感覚の大切さを教えてくれる楽曲だ。(小池宏和)
『ROCKIN'ON JAPAN』1月号より