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    レキシ/中野サンプラザ

    レキシ/中野サンプラザ - All photo by 聖徳太郎 (田中聖太郎)All photo by 聖徳太郎 (田中聖太郎)


    ●セットリスト
    01.大奥〜ラビリンス〜
    02.姫君Shake!
    03.古墳へGO!
    04.SHIKIBU
    05.年貢 for you
    〜ムチャブリーズコーナー〜
    [旗本ひろし]
    ・3年目の浮気(ヒロシ&キーボー)
    ・サヨナラCOLOR(SUPER BUTTER DOG
    [かえらの清盛]
    ・リルラ リルハ(木村カエラ
    ・ここでキスして。(椎名林檎
    06.GOEMON
    07.古今 to 新古今
    08.KATOKU
    09.KMTR645
    10.狩りから稲作へ
    11.最後の将軍

    (アンコール)
    En01.きらきら武士


    最新アルバム『ムキシ』を携えて、昨年11〜12月のホールツアー「まんま日本ムキシばなし」、さらに年明け1〜2月の横浜アリーナ&大阪城ホール追加公演へ――と全国を駆け巡ったレキシこと池田貴史が、この5月に開催したホールツアー、題して「特別公演〜豪華絢爛レキシ歌絵巻〜」。

    全国9公演に「邪馬たいこちゃん(石川さゆり)」、「かんぱくん(さだまさし)」、「八百よろずや清之介(キヨサク from MONGOL800)」、「かえらの清盛(木村カエラ)」、「中のよしえの皇子(中納良恵 from EGO-WRAPPIN')」、「旗本ひろし(秦 基博)」、「シャカッチ(ハナレグミ)」といった錚々たる顔ぶれの中から2組がゲスト出演。
    中でも、かえらの清盛&旗本ひろしをゲストに迎えた5月13日・中野サンプラザ公演では、レキシ自身MCで「オリンピックのチケット取るのより難しいと思う」と語ったほどのチケット激戦ぶりがそのまま、「良質な音楽を全力で遊ぶ」レキシの磁場と相俟って、突き抜けるような熱量と開放感を生み出していた。

    レキシ/中野サンプラザ

    「健介さん格さん(G/奥田健介 from NONA REEVES)」、「元気出せ!遣唐使(Piano・Cho/渡和久 from 風味堂)」、「蹴鞠Chang(Dr/玉田豊夢)」をはじめ辣腕メンバーが冒頭の“大奥〜ラビリンス〜”で響かせる爽快なファンクビートを受けて、レキシは早速サンプラザ一面ハンドウェーブの海へと塗り替えていく。

    そして、「ここで早速ゲストを――」とかえらの清盛&旗本ひろしを呼び込んでさらなる熱気を呼び起こすと、今度はかえらの清盛と一緒に“姫君Shake!”を披露。さらに、“姫君Shake!のロックンロールのビート感をキープしたまま、“Magic Music”、“OH PRETTY WOMAN”とカエラのキラーナンバーへ流れ込んでみせる――。
    音楽的な瞬発力と反射神経とユーモアをフル稼働したレキシのライブ運びと、そんなレキシが繰り出す小ネタのひとつひとつに反応して「演奏の合間に演奏する」バンドメンバーとの絶妙な掛け合いが、序盤からむせ返るほどの多幸感で会場を包み込んでいる。

    “古墳へGO!”ラストの「C'mon, baby 古墳へ」(DA PUMP“U.S.A.”風)から十二単をまとっての“SHIKIBU”へと雪崩れ込んで、「今日はもう、楽しすぎて嫌な予感しかしない!(笑)。中野、すごいね、盛り上がりが」(レキシ)と思わず語りかけるレベルで会場を揺らした後、今度は旗本ひろしを迎えての“年貢 for you”。
    小道具の米俵を抱えたひろしを「お前が持つとラガーマンみたい(笑)」といじりつつも、そこから“Girl”、“鱗(うろこ)”といった秦のマスターピースへいとも自然に流れていく。「触れるものすべてを音楽的にもエンターテインメント的にも最大限においしく響かせる」というレキシ時空への信頼感が、そんな場面からも伝わってくる。

    本編中盤にはレキシによる「ファブリーズ」風の生コマーシャルから、ゲストがどんな無茶振りにも応える「ムチャブリーズコーナー」へ。「ひろし」つながりで“3年目の浮気(ヒロシ&キーボー)”をデュエットしたり、SUPER BUTTER DOG“サヨナラCOLOR”をひろしが情感たっぷりに歌い上げたりする名シーンの合間に、「♪年貢の苦しみさえ〜 」と米津玄師“Lemon”のメロに合わせて歌い始めたり、予測不能なワクワク感の中で終始ライブは進んでいく(その小ネタのせいで段取りは予定より押しまくったらしいが)。

    ひろしに代わって登場したかえら、「偶然にも平家の家紋は蝶→“Butterfly”」、「高校時代の巫女アルバイトのエピソード」など、あたかもトークショーのようにアットホームな空気感の中でレキシと語り合っていく。
    アコースティックアレンジで“リルラ リルハ”、さらに、同じトリビュートに参加したという「ふたりの唯一の共通点」にちなんで、「ここで何しようか?」というレキシの前振りからかえらは椎名林檎“ここでキスして。”を伸びやかに歌い上げてみせる。

    レキシ/中野サンプラザ

    ゲストふたりを擁しての“GOEMON”から、ライブはいよいよ後半へ。“古今 to 新古今”から“KATOKU”のハードロック感へつないで一面の拳とクラップを呼び起こし、客席狭しとイルカのバルーンが踊り回った“KMTR645”では観客乱舞でサンプラザ激震!……とさらに刻一刻と会場の歓喜が高まったところで、本編終盤にはお馴染みの“狩りから稲作へ”。
    見渡す限りに稲穂が揺れる中、「イナホー!」コール&レスポンスも「高床式→高岡早紀→正岡子規→劇団四季→キャッツ!」もバッチリ決めると、曲中でゲストのふたりを、今度は「木村カエラ&秦 基博」として代わる代わる招いていく。

    レキシが観客にひまわりを手渡し、準備万端で秦の名曲“ひまわりの約束”を披露――というところで、なんと健介さん格さんがギターのイントロをミスってしまう。と、すかさず袖へ退場、何事もなかったように再登場してみせる秦。一面の大爆笑が巻き起こる。“ひまわりの約束”に満場のサンプラザが聴き惚れた後、秦と入れ替わりではカエラの“Butterfly”。すると、今度は元気出せ!遣唐使がピアノのイントロを間違えてしまう。踵を返して袖に引っ込むカエラ、“ひまわり〜”のエンディングからご丁寧に再現する秦とバンドメンバー。客席がさらにどっと沸く。アクシデントまでもが超贅沢なリアルタイムのコメディショーになっていくような高揚感が、この日の舞台には確かにあった。

    レキシ/中野サンプラザ

    観客一丸の“Butterfly”コーラスが鳴り渡る中、ブーケを手にした花嫁風レキシ&新郎然とした秦が神父・カエラの前に進み出る。
    神父「(カタコトで)病める時も、健やかなる時も、愛し合うことを誓いますか?」
    花嫁・新郎「……誓います!」
    神父「縄文土器、弥生土器、どっちが好き?」
    花嫁・新郎「……どっちも土器!」(花嫁、客席にブーケトス)
    カエラ/秦のワンマンライブではまず観られないであろう、レキシのステージならではのマジカルな瞬間が、オーディエンスを祝祭のクライマックスへと導いていった。

    熱気冷めやらぬ中、本編ラストの“最後の将軍”、さらにアンコールのダンスナンバー“きらきら武士”まで約3時間、高純度のエンターテインメント精神に貫かれた最高の一夜だった。9月17日(火)には沖縄で「特別公演〜豪華絢爛レキシ歌絵巻〜」の追加公演が開催されることも決定。レキシの宴は終わりなき進化の真っ只中にある――という証明そのもののアクトを繰り広げてくれた。(高橋智樹)
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