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1曲目のタイトルは“ままごと”。「ごっこ遊び」とはつまり本物ではないということだ。それは子どもっぽさや偽物っぽさを連想させるが、この曲はそれを否定したり、自虐したりしているわけではない。むしろ「ごっこ遊び」によって生まれる関係性を慈しんでいる。《このまま そのまま 二人でいよう》と。ままごとも、続けていればそれはオリジナルなもの、つまり「本物」になるのだろう。13曲目に“もうおしまいだよさようなら”という、いかにもエンディングのようなタイトルの曲があるが、アルバムはそれで終わらず、あと2曲ある。終わりそうで、終わらない。終わったと思ったのに続いていく……生きるとは、そういうことなのかもしれない。すっぽりときれいになんて収まらない。はみ出す。にじむ。6曲目“インタビュー”のサウンドなんて、にじんだ水彩絵の具のような美しさがある。にじんだ部分に宿るのは「情」と呼びうるものかもしれない。クリープハイプと私たちが、愛すべき暗がりで大切に育んできたものである。(天野史彬)(『ROCKIN'ON JAPAN』2025年1月号より)
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