昨年11月の初のワンマンライブ後にリリースされた“ロックスター”と“鯨の子”では、抽象的な描写が多かったリリックにメッセージ性が色濃く宿され、それに伴うように、隙間の増やされたトラックに乗るメロディの強度が高まってきていた。その方向性における決定打のような新曲である。《生簀の中で海を待ってる。/幸福をいつでも恐れる僕らは、穏やかな不幸に溺れている。》と捩れた現状を怜悧に見据えながらも、Teleはこう歌う。叫ぶ。《もう全部がくだらなくて、裸足のまま街を進んでゆく。/ああ僕らは呪いじゃなくて、/馬鹿げている祝福でいたいや!》と。《拝啓、僕らきっと忘れていいよ。/思い出を美化はしないぜ。/だって素晴らしかった。美しかった。/だからもう、次の未来へ。》と。デヴィッド・ボウイすら想起してしまう、終わりが来ることを前提とした刹那的なヒロイズム。煽情的なメロディと次々盛り上がり続けたまま終わる曲展開も相まって、熱風が叩きつけられるような興奮を生んでいる。「別れ」を歌った楽曲だが、ここを入り口にして出会ういくつもの魂が救われる様が、瞼に浮かぶようである。(長瀬昇)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2023年7月号より抜粋)
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