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《さぼりたい》《ふけたい》《今日は》《そうだね》の四語しか歌詞がない、マーシーによる驚愕の傑作“さぼりたい”が前作には収録されていたが、今作の“くだらねえ”は、それを超えている(《くだらねえ》と《おお》の二語しかない)。かと思えば、平易な言葉で日常の1コマを綴ることで、人生の真実を射抜く“ゆでたまご”や“不器用”のような曲もある。ヒロトの曲は、“ハイウェイ61”“恋のOKサイン”“メロディー”“ダーウィン(恋こそがすべて)”のように、「音楽」と「恋」の絶対性を描いたものが、特に輝いている気がする。いずれも、前からこのバンドの楽曲が持っていた武器だ。にもかかわらず、どの曲も新鮮で、生々しくて、聴くとハッとなる。進化も成長も熟練も全無視、衝動のみを何十年単位で求め続ける、なんてことが可能なのはこのバンドだけだが、そうであっても毎回同じではない、必ず新しい興奮やきらめきや発見がある。という事実を、新作に対峙すると知る。で、その度に思う、だいぶ奇跡だな、この人たち、と。(兵庫慎司)(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年3月号より抜粋)
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