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満を持して放たれる初のフルアルバム。この数年の目覚ましい躍進を追っているとつい忘れそうになるが、今作のタイトル通りメンバーはまだ20歳だ。言うまでもなく、彼らの強みは、若さに基づく瑞々しさやエネルギッシュさだけでは決してない。ラフさとタイトさを兼ね備えた豊かなバンドアンサンブルは、しなやかな緩急の中に時おりダイナミックな躍動やパワフルな気迫を見せる瞬間が何度もあり、まさに「柔よく剛を制す」という言葉がぴったり。これまでの代表曲の数々を収録した今作を通して聴くと、ケプラの生粋のライブバンドとしての力量と気概が改めてよく伝わってくる。何より、ふたつの新曲がすごすぎる。“ぼくのてんし”のライブアンセムとしてのとびっきりポップな爆発力は既にステージ上で証明済み。一方、“family”は、《幻》や《永遠》という言葉たちが否応なく訪れる「終わり」の儚さを残酷なまでに浮き彫りにする1曲で、その圧巻の筆致に思わず背筋が凍る。改めて、まだ20歳。本当に末恐ろしいバンドだ。(松本侃士)(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年5月号より抜粋)
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