『ROCKIN'ON JAPAN』がお届けする最新邦楽プレイリストはこちら
約3年ぶりとなるフルアルバム。まず1曲目の“最高速度”のイントロに引き込まれる。すでに何度も聴いた曲ではあるが、予備知識なしにこのサウンドを聴けば、相当尖ったバンドの作品だと感じるだろう。歪んだベースライン、タイトなドラム、ネガティブな思考を切り裂くように響くギター。このソリッドなアンサンブルがとにかくクールで、SHISHAMOのロックバンドとしての成熟(円熟ではない)を実感。かと思えば、ストリングスとピアノを繊細に編み込んだ“春に迷い込んで”や、ミニマルなミディアムスローナンバー“溺れてく”でのメランコリックな歌は、まるで胸を抉るように深く響く。ポップセンスに溢れたメロディラインにのせて、今作も宮崎朝子(G・Vo)は「恋」を歌うが、それはやはり「生きる」ことと同義なのだと、その歌声が告げている。ラストの“恋じゃなかったら”がまさにその答えのように響く。溢れて止まぬ恋心を歌うラブソングは今、そのままSHISHAMOの音楽へのときめきを表現しているようだ。(杉浦美恵)(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年5月号より抜粋)
『ROCKIN'ON JAPAN』5月号のご購入はこちら