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「哀愁を演じさせたら右に出るものはいない」バンドはメジャーデビュー10周年を迎えた直後にリリースした楽曲でも、やはり並々ならぬ切なさを放っている。《出会いには嘘がある/別れには本当がある》という冒頭から、すでに強烈に香る悲恋。“瞳に映らない”では、《行ったり来たりしないでよ/心変わりとか言って》と相手をあしらう理由のひとつとして持ち出していた「心変わり」を、避けられなかった恋の結末として描き切った。《ほつれる旬》や《ふやけきった心の隅》など、絵音節溢れる言葉たちが、言語化できない絶妙な感覚を掬い上げてくれる時点で唸ってしまうのだが、アレンジにも思わずニヤリとさせられる。《言えないよ》に秘められた気持ちの複雑さを語るかのように、《「じゃあね」》の後に4符で進む和音が徐々に不穏になっていったり、浮いているさまを彷彿させるように《ああ、もうあなたとは会えない》の歌メロが下り切らなかったり。アイコニックなアヒルから出発した11年目が楽しみで仕方なくなる一作である。(坂井彩花)(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年6月号より抜粋)
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