『ROCKIN'ON JAPAN』がお届けする最新邦楽プレイリストはこちら
わずか2曲でありながら、実に贅沢な作品だ。なにせ日本のポップシーンを牽引するアーティストたる彼女と、旧知のミュージシャンたちと純粋に音楽を楽しむ彼女のどちらも1枚で味わえてしまうのだから。“会いに行くのに”はクリアなギターカッティングと豊潤なストリングス、想像力の余白に委ねたリリックにより生み出される至高のポップソング。一方で“ねむい”は、一発録りの空気をそのまま閉じこめたフランクなアコースティックナンバーだ。歌詞も《洗濯物かなりめんどくさい》や《頑張るなんてしたくない》といった直接的な描写になっており、そのまま思ったことを口にしているような明け透けさがある。また、“会いに行くのに”が「記憶」といった過去に根差したテーマを用いているのとは対照的に、“ねむい”では《だらしない生活》を送っている現在進行形の今を描いている点も面白い。洗練と遊び、過去と今。ふたつの概念をフットワーク軽く飛び越え、変な違和感を持たせず聴き惚れさせてしまう手腕に痺れる。(坂井彩花)(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年7月号より抜粋)
『ROCKIN'ON JAPAN』7月号のご購入はこちら