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今年8月には初のワンマンライブを開催し、新たなページをめくり始めた平手友梨奈から、彼女自身が作詞にも携わった新曲が届いた。「私は人間」というタイトルとアートワークの土まみれの左手を見ればわかるだろうし、公開されたミュージックビデオからはますますそれが伝わってくるが、おいそれと触れたら怪我をするくらいの重さと鋭さをもった楽曲である。その歌詞はSNS時代に蔓延する悪意と残酷さをまっすぐに告発する社会的なメッセージをもったものであると同時に、いうまでもなく現在に至るまでの平手自身の経験を綴ったものでもあるだろう。なぜ彼女が何度も壁にぶつかり、ときに誤解を受けながらも表現を続けるのか、いや、続けなければならないのかが、《なんで終われないんだよ/なんで手を貸すんだよ/無意味なSOS》という言葉に滲んでいる。だがそれ以上に残酷なのは、この曲が僕ら世間が「平手友梨奈」に重ねるイメージそのものだという構造だ。この曲は「これ」を求める僕ら自身を告発するものでもある。(小川智宏)(『ROCKIN'ON JAPAN』2025年11月号より)
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