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あらためて幾田りらというシンガーソングライターの、柔らかで豊かで滋味深い歌声に聴き惚れてしまった。幕開けの“Actor”は、「演じている自分」のその裏にやさしく隠した本音や顔があることを歌った楽曲である。それが彼女自身のことのようにも響いて、このアルバムはナチュラルにパーソナルな色彩を帯びていく。新曲“Latata”では、思わず体が揺れるサウンドに乗せ、《Keep it grooving/ありのままで踊るの》と歌う。そう、このアルバムにはシンガーソングライターとして、ひとりの人間として、真正面から歌と音楽に向き合う幾田りらがいる。出色は本編ラストの“タイムマシン”だ。切なく複雑な恋の思い出を繊細に綴る歌。決してドラマチックに歌い上げるのではなく、日常の肌感覚、温度感をそのままに失くした愛への思いを掬い取るように歌う。その歌は、思わず吐き出された素描のようなエモーションが、繊細に筆が運ばれる完璧な水彩画へと至る過程を見るようでもあり、そこに清廉な音楽愛を見る。素晴らしい歌。(杉浦美恵)(『ROCKIN'ON JAPAN』2026年2月号より)
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