時を巻き戻し、更新する

ダイアン・バーチ『バイブル・ベルト』
2009年08月05日発売
ALBUM
ダイアン・バーチ バイブル・ベルト
最初、このタイトルにはどきっとさせられたが、「厳格な宗教教育を受けたことも、今は自分の一部だから」だというダイアン・バーチ。とくに若いアーティストにとって子供時代は痛みや闇の表現として表れることが多い。だから、宗教云々はさておきこの発言だけでこの人がどれだけ成長しきっているか、というのがよくわかるわけだが、このデビュー・アルバムもまさにそういうものだ。

バンドでもシンガーでも、タイムトリップしてきたようにそのまんま「ビンテージ」を鳴らすアーティストはいて、それがマニアックさを増せば増すほど、その才能の異端さをよく伝えるものになり、「オリジナル」で「本物」になることがある。そういう意味でいうと、このダイアン・バーチは新しい。バート・バカラック、ジョニ・ミッチェルらを彷彿とさせるオーセンティックさに、CCR、フリートウッド・マックといった土っぽさが交じり合い、からりとした包容力のなかに、今にも壊れそうな繊細さが息づいているのだ。それはしいて言えば「声」。しかしそれだけでなく、たとえばダフィーのように、世代や性別を超えて聴き手を鷲摑みにする力強さでもある。(羽鳥麻美)
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