「生きづらいよな。でも、それは俺だって一緒だから」
かつてのかやゆーなら、こんなまっすぐな言葉を口にすることは、きっとできなかったと思う。どこか照れくさくて、素直になれなかったのかもしれない。時には、少し突き放すような、距離を取るような雰囲気さえまとっていた。
でも、今日は違った。
言葉を真正面から、ためらうことなく届けようとしていた。
それは決して感情を押しつけるようなものではなく、そっと隣に寄り添うようなやさしさと包容力に満ちていた。ライブ全体に、そんな空気が流れていた。
そしてアンコール。
初の日本武道館ワンマン公演が発表された。
その瞬間、会場は歓喜というよりも、驚きと感動が入り混じった悲鳴のような歓声に包まれた。
「僕は僕だ」──そんな言葉を『らしく』の歌詞で歌いながら、一貫して“自分たちらしさ”を貫いてきたバンドが、ついにあの武道館という誰もが憧れる夢のステージに立つ。
それほどのビッグニュースがあったにもかかわらず、余韻に浸る間もなく、彼らはあっさりと次の曲へと進んでいった。その素っ気なさすら、「らしさ」の一部なのだと思う。
ステージの上のかやゆーは、いつものように飾らず自然体のまま。
けれどその姿は、ほんの少しだけ、大人びて見えた。(古閑英揮)