デヴェンドラ・バンハートという人には、天邪鬼めいたところがある。以前電話取材した際もテキーラ飲みながらで仰天したし、清貧ヒッピーの教祖かと思えばセレブ界に陥落(と言ってもナタリー・ポートマンなので、趣味はいいね)。時代の流れに逆行する如き今回のメジャー移籍にしても、ファンの一部を嘆かせるだろう。気ままな「俺道」ぶりでは、ライアン・アダムスといい勝負だ。
しかし意図的に煙に巻いているわけではないのは、トリックの通用しない作品そのものを聴けば分かる。前作『スモーキー』の難点だった曲数とアイデアの多さ(欲張りすぎで、せっかくのアルバム後半の良さが半減)が整理され、見通しのいい本作。特有のリラックスした温もりを残しつつ、それそのものが音楽な彼の歌声とアコースティック楽器の澄んだ響きを重視した音作りのバランスもいい。ポップ・アピールの強いM2.3.8など、このプロダクションでより広い層にリーチするはず。その意味で、音楽的にはきっちり駒を進めているのだ。彼の(面白すぎる)キャラやルックスを取り沙汰してアイコン的に祭り上げるのは、そろそろ終わりにしていいだろう。(坂本麻里子)