これがロックのメカニズム

ビーク>『ビーク>』
2010年01月13日発売
ALBUM
ビーク> ビーク>
ポーティスヘッドが極度の寡作にも拘わらず、なぜ変わらぬ存在感を保ち続け、画期的であり続けるのか。それが一発で分かるアルバムだ。ポーティスヘッドの「頭脳」、ジェフ・バーロウの新バンド、ビーク>の1st。その暗く重い音像は、一見ポーティスヘッドと地続きのように思える。けれど、実は採用されている方法論は真逆のものであったりする。

本作はオーバーダブを一切行なわず、すべてがライブ・レコーディングされたそうだ。元々ジェフはDJとしてキャリアが始まった人だが、つまりそれは人為的にループを生み出し、機械的な反復によって快楽を見つけてきた人ということだ。これはその逆である。非常にシンプルなリズムの上で厳密には繰り返しが存在しない演奏をただ記録する。そこにはループでは生まれ得ないズレが生じる。このズレこそジェフが本作で試したかったことではないか。その裂け目からは狂気を孕んだノイズや暴力的なリフがあふれ出す。これはポーティスヘッドがやるロックだ。

ロックは黒人のブルースを白人が演奏することで生まれた。ポーティスヘッドもまたブルースとの距離感から生まれた音楽なのだ。(古川琢也)
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