向き合う、信じる、繋がる

BUMP OF CHICKEN『HAPPY』
2010年04月14日発売
SINGLE
力強くリフレインされる《Happy birthday》。しかし、これは単純に生命の誕生を祝福する歌ではない。賑やかなアレンジとポップなメロディに乗せられて歌われる、《悲しみは消えるというなら 喜びだってそういうものだろう》という言葉。それは人が生きる上で絶対に逃れられない事実である。その上で彼らは聴き手に《どうせいつか終わる旅を 僕と一緒に歌おう》と手を差し伸べるのだ。そもそも、彼らは無責任な励ましや不確かな約束になる言葉を、その表現から徹底的に排除してきたバンドだった。それは言葉の持つ重みに誰よりも敏感だったからである。繋がりたい、支えたい、そんな気持ちを簡単に口にすることなく、「伝えたいこと」へ聴き手を導いていく。そのためには膨大な情報量と物語による「見立て」がどうしても必要であり、その究極があの『orbital period』だったと私は思う。そして今、彼らの中で言葉との関係性に変化が起こっている。藤原基央は、今ならもう「率直な言葉」に己の真意をすべて託すことができる。それは次のアルバムにもきっと強く作用する、重要な変化に違いない。(山本恵子)