それこそハード・ストンピン・ナンバー“あたし、ギターになっちゃった!!!!!!”で後藤まりこ自身《よくないことだけしたいの》と歌っている通り、エクストリームの限りを尽くしまくっているミドリ2年ぶりフルアルバム。“凡庸VS茫洋”“どんぞこ”といったミドリ十八番のジャズ核爆発的な楽曲が要所要所で炸裂する一方で、パンクとテクノを一気に蹂躙し倒すような“メカ”があったり、ピアノ・ダンス・パンクとでも言うべき“さよなら、パーフェクトワールド。”あり、『本当は怖いグリム童話』をまんま子守唄にしたような不穏さに満ちた“鳩”あり、卒業シーズンの桜ナンバーをパロったようなハジメ（Key）ボーカル曲“春メロ”あり、と多種多様な劇薬要素を盛り込んだ全10曲が、隣り合うトラック同士で次々に化学反応を起こしながら鼓膜の中にロック危険物質を流し込んでくる確信犯的作品。そんな中で、ピアノ・ロック的アンサンブルとまりこのギター＆絶唱がかつてないほどにポップな輝度を持った流線型として疾走する“リズム”“鉄塔の上の2人”のポップな爽快感が、逆にラジカルに響いてくる。（高橋智樹）