この村は死によって包囲されている――というフレーズが戦慄を誘うホラー小説・漫画『屍鬼』のアニメ主題歌。日本のロック界にBUCK-TICKあり!と楔を打ち込むような、ジャパニーズ・ゴスの金字塔的傑作である。
ピーッピピーッと響く心電図みたいな不穏な電子音と、生々しく牙を剥くカッティング・ギターとが生み出す生と死の熾烈なグルーヴが刺激的。中盤から、櫻井の鮮やかな歌声に風雅なチェンバロの音色が絡み合い耽美な闇の世界に引きずり込んでいく。今井が漫画を読んでイメージを膨らませただけあって、バンドの武器を総動員した最強のコラボとなっている。彼らの影響を受けたバンドは数多あれど、この堂々たる風格と、生と死を越境する深淵なエロス、ポップな黄金律は誰も真似できないだろう。
カップリングは星野作曲の“妖月‐ようげつ‐”。戦前ドイツのキャバレーミュージック風のひび割れたジャジーな音質がエロティックでカッコいい。
10月発売のアルバムへの期待が否応もなく膨らむ……。次号は、満を持してロング・インタビューだ!(井上貴子)
死神に与えられし神曲
BUCK-TICK『くちづけ』
2010年09月01日発売
2010年09月01日発売
SINGLE