そもそも、なんで音楽なんて聴くのかっちゅう話なのである。ましてや、CDを買ってアルバム1枚、約1時間ステレオの前に座って、そこから何かを得られることをお客さんが「期待」することを、なぜ「期待」できるのか。そのためのハードルは今、はっきり言って高い。ちなみに、何で小説なんて雑誌なんて写真集なんて買うのか、映画なんて舞台なんて観るのか、ラジオなんて聴くのか、様々なエンターテインメントや娯楽がそんなテーマと直面しているわけだ。でも「よっしゃ、おまえらに何かをもたらすもんを作ってやろうじゃねえか！」と意気込めばいいのかというとそういうもんでもない。

このくるり新作は、聴けて良かったと心から思える、また今日も聴きたいなと時間を作りたくなる、手元に置いとく必然のある素晴らしい1枚。是非、買ってください。ポイントは余計なものが一切入っていないところ。彼らが、今、自分が音楽を聴くときに何を期待するかに純粋に最初から最後まで向き合って作り上げたことがはっきり感じられる。しかも彼らがそれをやるとニーズに応えるポップスではなく、現代をポップに暴くロックになる。逆に。（古河晋）