音楽の愉しみをもう一度

フィル・コリンズ『ゴーイング・バック』
2010年09月15日発売
ALBUM
フィル・コリンズ ゴーイング・バック
カート・コバーンは生前「俺が着るTシャツは、ジェリー・ガルシアの血とフィル・コリンズの尿で染めたTシャツだ」と記したが、彼がどれだけ慎重に言葉を選ぶ人かを考えれば、単に反抗の対象として「ヒッピー文化のアイコン」と「産業ポップ・ロックの権化」を選んだだけではなく、実は両者へのリスペクトのニュアンスも微妙に込められているようにも思えるのだ。おそらくカートは、フィルの才能も密かに認めていたのではないだろうか。

80年代の音楽界においてフィル・コリンズが如何に巨大な存在だったかは到底ここでは説明しきれないが(アルバム・セールスはジェネシスの分も加えると累計で2億5千万枚だそうだ)、その反動か、90年代以降は急速に活動状況が落ち着いていったのもやむを得なかったのかもしれない。8年ぶりの新作は、彼が大好きなモータウン・ヒット・ナンバーのカバー集で、25曲も入ったトラック群からは、再び音楽を気軽に楽しもうとした姿が浮かんでくる。突発性難聴や脊髄の手術を乗り越えてきたという経緯を思うと、明るく楽しいアルバムなのに、聴いた後けっこう泣けてきたり。(鈴木喜之)
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