両極端を天性の洗練で乗りこなす

ジャミロクワイ『ロック・ダスト・ライト・スター』
2010年11月03日発売
ALBUM
ジャミロクワイ ロック・ダスト・ライト・スター
ジャミロクワイといえば、デビューまでのいきさつと3rd『トラヴェリング・ウィズアウト・ムーヴィング』のインパクトがあまりにも大きかったために、その後どこか過小評価されてきた向きもあった。しかし5年ぶりとなる本作は、ジャミロクワイかくあるべしという凄まじいものになっている。原点回帰などというちんまりしたものではない。

1stシングルのM2は一聴した時点ではかなりスムーズなナンバーに思えたが、今考えるとこれはかなり「親切な」イントロといった感じ。メロウに始まり、ジミヘンばりのサイケ・ギターが轟くオープニングなど序の口で、あくまでプリミティブ&オーガニックに鳴らされる四つ打ちが気持ちいいジャミロクワイならではのダンス・ナンバーM4、あえて潰したというセクシーなハスキーVoが冴えるM5に、M8の即興アヴァン・ジャム・セッションからロマンティックなサンセット・ソウルM9への流れ(圧巻!)などなど、息をつかせぬハイライトの目白押しだ。ジェイ・ケイらしいハイトーン・ボイスはM11で披露されているが、その他の楽曲では、ライブ感を大事にしたかったという意向ゆえか、ボーカルも楽器の一部として息づいている。当初から、レトロ・フューチャリスティックを天真爛漫に、なおかつ高い洗練度でやってきただけに、より高度な洗練を目指さずともそれを達成し、プリミティブな音楽的欲求と真正面から向き合ったときの破壊力には凄まじいものがある。ミュージシャンらしからぬセレブな一面も見せるジェイ・ケイの両極端なキャラクターをあらためて思い出して妙に納得した。(羽鳥麻美)
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