消えないストロークスの刻印

ザ・ストロークス『アングルズ』
2011年04月06日発売
ALBUM
ザ・ストロークス アングルズ
昔、「ロックじゃなければなんでもいい」と言ったパンク・バンドがいたけれど、「ストロークスじゃなければなんでもいい」とでもいうようなストロークスのアルバムである。おそらく長年のファンは、アルバム冒頭“マチュ・ピチュ”のレゲエのリズムからビックリするだろうが、その後も、ボサノヴァがあったり、ポリスやクイーン、キング・クリムゾン、レディオヘッド、ミューズといった名前が浮かんでくるような、ありとあらゆる古今東西のロックの文体も導入されている。“登校拒否”だったジュリアンにしても、今まで聴いたことのないハイトーン・ボーカルを披露しまくっていて、脱ストロークスという点では5人のメンバー全員のビジョンは一致している。前作『ファースト・インプレッションズ・オブ・アース』とも違う、文字通り様々な「アングル」を取り入れた新しいストロークスだ。

なので今までのストロークスのイメージを持って臨むと、驚かされるのだけど、不思議なのは、にもかかわらず、それがストロークス以外の何物でもない音になっていることだ。ジュリアンの声が大きく貢献しているのは間違いないのだけども、ジュリアンのソロと較べても、ストロークスとしか言いようのない、あの5人による交感がアルバムには刻まれている。そう考えると、彼らのファーストは5人の意志が1㎜もブレることなく21世紀のロックンロールのスタート地点へと向かっていた事実に改めて驚かされる。もう一度、あの奇跡のシンクロニシティを聴きたいのも事実だけれど。(古川琢也)
公式SNSアカウントをフォローする

最新ブログ

フォローする
音楽WEBメディア rockin’on.com
邦楽誌 ROCKIN’ON JAPAN
洋楽誌 rockin’on